ウズベキスタンでパーティーなどで食事やお茶の接待を受けることがよくあります。
外国でそうした接待を受けるときに気になるのが、その国特有のマナーです。
ウズベキスタンで何度かそうした接待を受けたときに、「へぇー、そうなんだ」と日本との違いに驚いたことがいくつかあります。カルチャーショックではあるのですが、やはり「郷に入っては郷に従え」が基本です。
最初に驚いたことは、
「パンはちぎって、(「皿に」ではなく)テーブルに直接おく」というマナー。
パンはこちらでは「ノン(нон)」といいます。 ノンは地方によってさまざまですが、たいてい丸くて円盤型で、径20cmくらいから大きいものは径50cm位までいろいろです。 あらかじめテーブルに積み上げてあったり、給仕さんが配ったりするのですが、それを千切って、列席者に配るのは、テーブルの中の誰でもいいようですが、主宰者であったり年長者であったりするようです。ナイフで切るのもダメみたいです。必ず手でちぎります。「誰でも勝手に自分の分を千切って・・・」というのも、ダメみたいです。たいていテーブルクロスの上に無造作に配られて、列席者はそれに手を伸ばす、というのが正しいマナーみたいです。
最初に見たときは、やはり驚きでした。 「なんでテーブルの上に直接置くのかな? 皿があるのに・・・」と思いましたし、「自分で好きなだけ千切って持っていってもいいのかな?」とか疑問でした。
「ノンをおかずにブロフを食う」
これはマナーではないですが、私にはやはり驚きの習慣でした。
以前紹介しましたが、「プロフ」という、ウズベクだけでなく中央アジアのどこへ行っても主食として供される、(日本風に言えば)「焼きメシ」ですが、レストランなどで頼むと、必ず「ノンはいかが?」と訊かれます。周りを見れば、たいていのウズベク人はノンを片手にプロフを食べています。どっちがおかずで、どっちが主食か、微妙なところですが、日本人にとっては「なんで『パンをおかずに焼きメシ』なんだよ~」という光景です。でも考えてみれば、学生のころ「ラーメンライス」というのを食していたのを思い出して、「それもありかな~」と納得しています。
「大の男が二人で一皿のプロフを食べる」
パーティーの席で、後半になるとプロフが供されます。このときのプロフ、かなり大きめの皿に盛り付けてあって、私と隣席の初老の方との間に置かれました。私のCP(カウンターパート)が私の傍に来て耳打ち:「このプロフは隣の人との二人分です」と。たしかにスプーンもふたつ用意してありました。私は隣席の方と仲良くこの一皿を突っつきはじめながら、人生はじめての「ひと皿の料理を『赤の他人』と二人で仲良く突っつく」という愉快な体験を味わっておりました。この時のブロフ、けっこう美味しかったので、隣席のおじさんと競い合うように突っついて、完食でした。ウズベキスタンでは、こういうこともありなのだ、と前もって承知しておくといいでしょう。隣席がうら若き女性だったらどうするんだろう?そういえば、この時のパーティーのテーブルには女性はいなかったような・・・男性と女性は決して同じテーブルにつかないのでしょうか?そのあたり、まだよくわかりません。
「『ごちそうさま』のマナー」
日本では、合掌して「ごちそうさまでした」がマナーですが、ウズベキスタン(おそらくイスラム圏どこでも)では、「両手で(顔には触れずに)顔を洗うときのような仕草を一度」というのが「ごちそうさま」です。イスラム教の礼拝の仕草と同じですね。
同僚とレストランに行ったときにも、食事が済むと同僚は必ずその仕草で席をたちます。
日本人は最近あまり「いただきます」「ごちそうさま」を仕草や声であらわさなくなっているようですが、ウズベキスタンの人々は、周りを見る限り、ほぼ例外なく「ごちそうさま」の仕草を守っています。そのかわり、「いただきます」に相当する作法は、まだ見たことありません。あるんでしょうかね?
海外で生活する時、食事のマナーというのは必ず誰もが直面することなんですが、私は逆に日本人である自分の食事作法やらマナーははたしてどうなんだろう?と考えたりします。
例えば、「食器に直接口をつけて食す」という食べ方は、おそらく東アジアや東南アジアなど「箸」文化圏特有じゃないかな、とか思います。味噌汁や汁物の汁は「箸」文化圏では器に口をつけて食します。これは欧米圏などスプーン・フォークの文化圏にはない食事作法だと思うのですが、どうなんでしょう? 「器に直接口をつけて食す」という食事作法は「スプーン・フォークの文化圏」ではきっとマナー違反なんでしょうね。 南アジアやアフリカはどうか、と考えると、これらの土地には「汁もの」という食形態が基本的にないのでは?と思います。食事作法の基本が「手・指で直接食す」という文化圏には「汁もの」という食概念がないんじゃないだろうか?というのが私のシロウト文化人類学(?)的考察の結論です。
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