ガイアナという国

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ガイアナ地図ガイアナは南米大陸の北東部、カリブ海(大西洋)に面する共和制国家で、英連邦の一員です。
正式名称は、Co-operative Republic of Guyana(ガイアナ協同共和国)という珍しい名前で、これは、独立時の政権を担ったバーナム首相という人が協同組合制度をベースにした社会主義国家建設を目指してつけた国名、だそうです。
 
面積:約215,000平方km ほぼ日本の本州くらい
人口:およそ80万人
 
本州ほどの広さの土地に、わずか80万人ほどの人口、ということで、人口密度は3人/平方km。
全人口の9割以上がカリブ海(大西洋)沿岸地域に集中しています。
私が今住んでいる、首都ジョージタウンは人口23万人ほどで、全人口の30%近くがすむ、ガイアナ最大の都市です。
 
 
 
 
 
ガイアナ地図狭くて人口が集中する沿岸地域から内陸に入ると熱帯雨林のジャングルがひろがり、ブラジル国境付近に内陸サバンナがひろがる、という地勢です。
左の地図で、90%以上を占める緑っぽい所は熱帯雨林で、わずかな肌色っぽい所(沿岸部と東部ブラジル国境周辺)が人が住む拓かれた土地、です。
ガイアナは古くは17~18世紀、オランダの植民地で、19世紀に入ってイギリスの支配下で植民地となり、1966年に英連邦の一員として独立。
ガイアナの電源コンセント英連邦の一員なので、公用語は英語で、車も右ハンドル・左側通行ですから、われわれ日本人にはとても親しみやすく感じます。 おまけに、電圧やプラグ・コンセントの形状まで日本と同じですから、変圧器も不要です。電圧やプラグ形状が日本と同じ国なんて、ここが初めてです。
 
ガイアナ地図ガイアナの西側にベネズエラがあります。 ベネズエラとは国境をめぐって紛争が続いていて、ベネズエラの主張によると、右の地図の1・2・7・8・9・10の部分がベネズエラ領であるから返せ、ということなんだそうです。 返してしまうとガイアナは今の半分以下、どころではなくなってしまう状況です。解決の糸口は見つからず、時間だけがすぎていきます。
 
 
 
ガイアナは6つの民族から構成される多民族国家、といわれます。 大半を占めるのは、インド系(40%超)、アフリカ系(30%超)です。元々の先住民(「インディヘナ」とか「アメリンディアン」とかいうそうです)は一割に満たないそうで、街を歩いてもたしかにインド系かアフリカ系の顔しか目にしません。
 
2011年以来続いたインド系政党による統治が今年5月の選挙でアフリカ系政党にかわり、今もまだ新政権への移行の混乱が続いています。 インド系旧政権の腐敗・汚職があまりにもひどく、国民の怒りが反映した政権交代だったようです。
ガイアナには大きな河川がふたつ、エセキボ(Essequibo)河とデメララ(Demerara)河があって、ジョージタウンの西端にデメララ河が流れています。 エセキボ河は南米で3番目の大河だそうです。どちらの河も、私が見た範囲では、泥水のような濁った流れで、日本では見られない川幅で大陸のスケールを感じさせます。
下左の写真はエセキボ河。橋はなく、河を渡るには時速50kmくらいでとばすスピードボートか大きなフェリーボートでわたります。 写真(下左)で対岸のように見えるのは河の中の島で、この島を迂回して、さらにもうひとつ島を迂回してスピードボートでも40分くらいかかります。川幅、3~40kmくらいあるかもしれません。
下右の写真はデメララ河の渡し舟の船着場です。対岸まで15分くらいです。 すこし上流に浮橋が作ってあって、浮橋ですが、けっこう頑丈に作ってあって、交通量も多いように見受けました。大型船の通行のために一部が日本の勝鬨橋のように開くようになっています。
エセキボ河デメララ河の船着場
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ガイアナ地図 河口・沿岸の泥流ふたつの河はカリブ海(大西洋)に河口を開いていますが、衛星写真(左)でみてもわかるように、上流から運んだ泥で沿岸域もずっと茶色く濁っていて、かなり沖にでないと「澄んだカリブの海」をみることはできません。
宿舎近くの海岸(カリブ海です)
私の宿舎から歩いて15分ほどで海岸にでるのですが、そこからみる海岸も茶色に濁っていて、泳いでいる人は一人もいません。(右写真)

 
 
 
 
 
 

ジョージタウン 衛星写真首都ジョージタウンは植民地時代の面影をすこし残しています。街全体を撮った衛星写真(右図)でわかるように、日本でいうと京都の町並みを思わせるような、碁盤の目のように走る道筋はオランダ統治時代に区画されたといわれます。 ただ、道路もそれに沿って走る水路もごみだらけで、きれいにしたらきっと見栄えがいいだろうに、と少々残念です。都市の環境保全に予算をさく余裕がまだないのでしょう。
ジョージタウンの見所は、木造の大きな教会(セントジョージ教会)とデメララ河のそばにあって毎日にぎわう「スタブローク市場」でしょうか。 ガイアナを観光で訪れた日本人のブログなどを見ると、「南米で一・二を争うほど危険な街、といわれるジョージタウンのなかでも『危ない』といわれるスタブローク市場」だそうですが、比較的物価も安いようですし、活気に満ちていて、私のお気に入りの場所です。 ただし、鉄骨建ての大きな建物の中は細い路地が縦横に走っていて、所々人気(ひとけ)の少ない、ヤバそうな場所もあります。
この市場の中にはいるときは、
  「腕時計ははずして、
   カメラは決して肩にかけないで、
   観光客然とした服装を避け、
   できるだけ2人以上で、
   できれば現地人の友人と一緒に」
がお勧めです。野菜・肉・魚・惣菜・日用品などなど、なんでもありの、見ているだけでも楽しい市場です。
スタブローク市場 左側が市場の建物スタブローク市場の中(ピンボケご容赦)スタブローク市場前の物売り
 
 
 
 
 
【規模の経済、ということ】
ガイアナは日本の本州ほどの国土がありますが、人口はわずか80万人足らずです。
前任国スワジランドや前々任国パラオのように、国土が狭かったり(「四国ほどのスワジランド)、人口が極端に少なかったり(全人口2万人のパラオ)という途上国では、産業を興すにも「市場が狭すぎる」という制約が大きくて、中進国への発展すら望めない、大きな壁がありました。ここガイアナにもそれを感じます。 80万人という人口はどのような産業にとっても市場が小さくて、ある程度以上の規模を望むことが困難な状況があります。 「規模の経済」という言葉がありますが、おそらく、こうした途上国にとって国土や人口の規模というのは、先進国からの支援の有無にかかわらず、発展にとっての大きくて、ほぼ絶対的な制約条件なのではないか、と思います。第二次大戦後、途上国から出発して現在中進国の仲間入りを果たした国、あるいは果たしつつある国を見てみると、ベトナムやマレーシアなどの例を見ても、やはり国土・人口にある程度の規模があり、産業を興すのに十分な労働力(人口)と市場(国土)がありました。 人口・国土いずれの面でも一定の規模より小さいと、市場の発達が困難になり、教育が定着しても人材の流出が起きはじめる、という新たな困難を目にすることになります。 
 
途上国から中進国、さらに先進国という発展には「中進国の罠」という、よく知られた壁がありますが、私には、この「規模の経済」というのも、小規模途上国にとっては無視できない壁だと感じられます。
スワジランド・パラオ、そしてここガイアナ・・・こうした「規模の経済」から見放された国々にとって、発展の可能性とはいったいどこに見出せばいいのでしょうね・・・
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