「身の丈にあった××」について考える

パラオの官公庁で技術協力のマネ事のような仕事をしていると、パラオの行政機構のさまざまな側面が目にはいってきます。
ひと言で言うと「人口2万人、琵琶湖にすっぽりおさまる広さの小さな国なのに、どうしてこんなに大げさな行政機構なんだろう?」ということです。

小さくても国家として振舞わなければならない、という制約は十分に承知しています。
市場が小さくて産業を興すにはムリがあること、太平洋に浮かぶ島国の物流ハンディキャップ、などなどいろいろな面から、最終的に「公務員で面倒見る」のが手っ取り早い雇用政策だったのかもしれません。 また、国家としての形をつくる過程でたぶんアメリカの行政機構をコピーしたんだろうと思いますが、おそらく、アメリカも国家経営のノウハウをきちんと伝えることもなく、また要・不要の判断もせずに、単純コピーしてしまったのだろうと思います。 パラオには、もちろん国家経営・国家運営のプロはいなかったはずなので、取捨選択の余地なく、アメリカ式をコピーしたのだろうと思います。

しかし、やはり(日本で言えば町か村の行政規模で)「大統領」「国務省」「教育省」「司法省」「財務省」「・・・省」・・・「・・・省大臣」「・・・省副大臣」・・・「・・・省・・・局」・・・「・・・省・・・・局長・次長」etc.etc. 延々と続く、この大げさな行政機構をみていると、この膨大さ・この複雑さが発展の足をひっぱっているんじゃなかろうか、と思うこともしばしばです。(今、ここでは『発展』の解釈や是非については考えないでおきます)

私の専門分野であるIT(Information Technology)においても、各省庁ごとにIT部門を持っていたり、当然のことのように各省庁ごとに必要なハード一式がそろえてあったりします。 で、当然ながらそれらの面倒を見る専門家(ITプロフェッショナル)が必要なのですが、これもまた当然ながら、人口2万人という極少国家規模で、小・中規模国家並みの人員をそろえることはとてもできません。また、省庁間連携がほとんど見られないために同じようなシステムが重複開発されています。

国家規模から考えるとパラオ官公庁全体で一つのIT部門を持てば十分ではないだろうか、という疑問があって、「省庁横串構想」というのを提案したことがあります。 どの省庁にも属さず、どの省庁のIT関連業務をも引き受ける、少数精鋭のITチームを大統領府直下に置き、各省庁のIT部門はなくしてしまおう、というアイデアです。  国家全体のITコストの削減やIT人材の有効活用、さらに開発基準やコードの標準化など、さまざまなメリットが想定できます。 当初、ほとんど反応なかったのですが、最近(2011.08)になって政府の高位レベルで少し興味を持つ人が現れ始めました。 どういう展開になるか、楽しみです。

パラオ全体の行政機構に話を戻すと、行政の簡素化を徹底しようと思えば、(たいへん極端な考え方かもしれませんが)例えば、
    省庁は全部で2つ、国務省と総務省にまとめる
    国務省は、独立国としての外交を担う必要がありますから、なくせません。
    他の省庁は全部まとめて、Ministry of General Affairs 総務省に。
というようなことは不可能だろうか、とか考えたりします。
でも、やはり余剰人員の受け皿がないパラオではムリでしょうか・・・
せいぜい大臣ポストがなくなるだけで行政機構はそっくり残っていたり・・・

現在のパラオに必須なモノ・コトは何か?と問われたら、私は迷うことなく「国家経営・国家運営のプロフェッショナルな人材を育てること」と答えるでしょう。 

身の丈にあった行政機構で身の丈にあった国つくりを
  そして
国家経営・国家運営のインフラをまず第一に

私がパラオに感じることはこの2点に尽きるようです。
そして、そのどちらも絶望的に困難、と感じる昨今です。

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