orthography         正書法

正書法、つまり、「正しい書き方」です。

手元に2005年7月のパラオ国会議案のコピーがあります。 題して、
  The Bill for an act to recognize and formalize Palauan Orthography
  and to require educational institutions in Palau to teach Palauan
  Orthography in the classrooms, and for other related purposes.

その議案書の中で、「パラオ語正書法委員会」が設置され、5名のメンバーで審議する、としています。 ベースになっているのは、Lewis S Josephs の「パラオ語文法ハンドブック」(1997年)だそうです。 パラオ語の正書法は1970年代から議論され、開発されてきてはいるそうですが、国会であらためてこうした動きが出たということは、なにか象徴的な印象をあたえます。

つまり、パラオ語はまだ「書き言葉」として確立してはいない、ということかもしれません。
  (私のようなシロウトの眼から見ると、「文字を持たない言語は、話し言葉と
   書き言葉が分離しないのではないか」というシロウト考えがあります。 
   日本語・中国語・韓国語はすべて分離しています。 私の知る範囲では、
   スリランカのシンハラ語も、非常に厳格に話し言葉と書き言葉が分離して
   います。パラオ語は独自の文字を持たなかったので、書き言葉が確立しな
   かった、ということなのかな、とか想像します)
たしかに、グアム大学監修のパラオ語の教科書を読んでいると、同じ言葉が異なる綴りでつづられているケースとか、けっこう混乱しているな、という印象を受けます。

例えば、地名の場合ですが、コロール島の隣の「アラカベサン島」ですが、
   Ngerkebesang
   Arakabesang
の2通りの綴りが見られます。 また、アラカベサン島のコロール寄りの地区「ミューンズ地区」の綴りも、
   Meyuns
   Meyungs
の2通り見られます。

あるいは、 Robert E. Gibson の 
    Palauan Causatives and Passives
     An Incorporation Analysis
という論文のなかに、「’and’の意味を表す表記にも [ma]と表記する人と[me a]と表記する人がある」というような記述があり、まだまだ正書法として確立しているのではないことがわかります。

これらの混乱も「正書法委員会」のなかで審議され、統一されていくものと思われます。

Leave a Reply