駆け込み訴え?それとも・・(新聞記事から)

パラオの新聞TIA BELAU紙の「Letter to the Editor」欄に最近(2011.05)すこし気になる記事が
載りました。 原文(コピー)はこちら

題して「Citizen whose mother lost clan land, appeals to Japan envoy」

記事はバベルダオブ島のある氏族の代表者が駐パラオ日本大使に向けて訴えるLetterです。
要約すると、
 1. 1999年の決定、さらに2002年の支持決議によって、マルキョク小学校周辺の土地は
    Baulbel氏族が所有者であること
 2. Baulbel氏族の代表であった、筆者の母は96年前、統治者である日本に土地を徴用され
    以来現在に至るまで、返却されていない。
    (「96年前」というのは、たぶん第一次大戦後のドイツから日本へ統治が変わった時期、ということでしょう)
 3. 日本の「欺瞞的で、強圧的で言葉に尽くせない非人間的な蛮行が、私の人生を経済的に破壊した。」
    (原文 Because of your government’s fraud, coercion, forceful, and unspeakable inhuman treatment this has financially devastated my life. )
 4. 日本はこの問題を国連人権委員会に提起し、国際司法裁判所で人権侵害事案として扱ってほしい
 5. 法的手続きとは別に、この問題を解決する最上の方策は、
    この人権侵害に対して960万ドルで手締めにすることだ。
    (原文: I suggest that the best and appropriate way to solve this matter outside legal preceedings is by setting this matter with a sum of 9.6 million of punitive damages and violations of fundamental freedom and principles of the universal decleration of human rights.)

読み終わって、なんとも後味の悪い記事でした。
人によってさまざまな受け止め方があるだろうと思います。

ある人は、
 「いつまで戦争責任の後始末をやればいいんだ? 私らはもう戦争を知らない世代だというのに・・・」
また、ある人は、
 「パラオの統治が日本からアメリカに移った時点で『日本が不当に奪った私の(氏族の)土地を
  返してほしい』とアメリカに訴えるべきだったのであり、現時点で日本はマルキョク小周辺の土地を
  どうこうする、いかなる権限ももたないはずだ。 
  パラオ政府があなたの所有権を裏付けているし、それ以上に何が必要なんだろう?
  あ、慰謝料、か」
また、ある人は
 「要は最後の5番目『慰謝料よこせ』なんでしょ。 ダメもとで『カネをくれ』と言ってるだけでしょ。
  でも、96年分ということか、一年10万ドルって高くね? 積算根拠は何なんだろ?
  パラオの経済事情が悪くなると、こういうの増えるよ、きっと」

どう判断していいのか、難しいところです。
いずれにしても日本大使の名前を挙げており、
パラオ全国に広がる(公器としての)新聞の記事ですから、
『黙って無視』というわけにはいかないでしょう。
それにしても、最後の行の「outside legal preceedings・・・」には苦笑してしまいました。
「そこかよ、君の言いたいことは」というような・・・

それにしても、私たち日本人はいつになれば『戦争責任』という肩の荷をおおろすことができるのでしょう。
私の耳にまるで幻聴のように「そんなの関係ねー! そんなの関係ねー」という某芸人さんの
声が遠く聴こえてきます。 
戦争を知らない私が戦争の結果責任を負う、はたしてどのように・・・

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