兄弟姉妹を紹介するとき

以前、職場の同僚といっしょにすこし離れたところにある会議場でインターネット関連の会議に参加したときのこと。

会議が終わって、スワジランドでは、会議などのあと主催者がお茶と菓子、ときには軽い食事でもてなすのが習慣のようで、私も同僚といっしょにお茶を飲んでいました。
そこへひとりの女性が近づいてきて、私の同僚に親しげに話しかけてきました。 同僚はしばらく話したあと、おもむろに私のほうに向き直って、「私の妹のxxxxxxです」とその女性を紹介しました。 ひととおりのあいさつをすませたあと、同僚が妹さんを指しながら、私にこう言いました:
「この妹は、私と父親も母親も同じ妹です」

スワジランドではこれが兄弟姉妹を紹介するときの、きちんとした紹介のしかたなのですね。
最初、私は彼の言っている意味がよくつかめませんでした。 彼も自分の説明のしかたが日本人である私にとって違和を感じさせるものとは思っていませんから、とりわけ説明もしませんでした。 ただ、私にはその紹介のしかたが妙に耳に残っていて、気になっていました。 その後、スワジランドのことについていろいろ知るうちに、彼の紹介の仕方についてもどうやらこうかな?という程度には理解できるようになりました。 
スワジランドの婚姻制度は「一夫多妻制」です。 さらにスワジランドでは、ご承知のようにHIV/AIDSの感染率・有病率が世界一、というお国柄なので、両親がAIDSで亡くなって親戚やときには隣人に引き取られるケースがけっこう多く、それらが決して美談でもなんでもなく「あたりまえのこと」として根付いているようです。 最近の新聞で、「スワジランドでは、両親が健在で両親に育てられている子供は全体の22%にすぎない」という記事を見ました。 ですから一家のなかの兄弟姉妹といっても、血縁であるとは必ずしも言えないケースがごく当たり前にあります。 というわけで、両親(父と母の両方)が同じ兄弟姉妹であることをことさらに説明する、という、私たち日本人にとっては少々違和のある紹介の作法がここスワジランドにはあるのですね。 
私の同僚が妹さんを紹介したときの「私と父親も母親も同じ妹です」という表現は、そうしたスワジランドの国情を背景にかかえた重さのある表現だったのですね。

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