【新聞記事から】AGOAについて(2) : 庶民の暮らしへの影響

以前、AGOA(注1)についての記事を掲載しましたが、適格国から除外されることで先ず影響を受けるとされた縫製産業に従事する労働者へのインタビュー記事が新聞に載っていました。
  注1:AGOA African Growth and Opportunity Act: アメリカの法律。アフリカ製品を原則的に
     無制限・非関税でアメリカ市場に受け入れる、という『アフリカ成長機会促進法』。
     ただし、法で定める適格条項を満たすことが要求されます。
     スワジランドは統治形態や労働者の権利条項などで、今年にはいって非適格国とみなされました。

AGOAから除外されることによる影響もさることながら、インタビューに答えている人たちの勤労報酬や生活実態は想像以上にきびしいものでした。 UN(国連)の統計で『貧困率』というのがありますが、「一人一日2ドル以下で生活する国民の割合」となっていて、(先日掲載した、Vision2022関連の記事にもありますが)ここスワジランドでは、実に国民のおよそ三分の二がそうした極貧レベルの生活をおくっています。 新聞の記事を見てみると(画像:クリックで拡大可):

AGOA除外後、労働者へのインタビュー

“Nosizo Mokoena”さん : 「21歳で、Matsapaで仕事に就くために地方からでてきました。2人の子供の面倒をみています。彼らの父親(彼女の夫?)は刑務所にいます。 電気・水道のない部屋をE160/月で借りています。収入は2週間でE590。家計が苦しくて学校を卒業できなかったので、教育をうけていなくてもできる今の仕事が、子供たちによりよい生活ができる絶好のチャンスだから、この仕事を失いたくありません。政府がAGOAから除外されないよう全力を尽くしてくれるよう、心からお願いします」

“Siboniso Ndima”さん : 「2週間でE650の収入で8ヶ月働いています。家では5人扶養しています。私は、妻も働いているので、恵まれているほうです。今の仕事は長時間労働なので、他に収入を得る仕事はできません。 政府にお願いしたいのは、この国を導いていくリーダーシップを発揮する絶好の機会だ、ということ、他国からの援助なしではもっと困難な状況になるだろう、ということ」

“Dumisani Ngwenya”さん : 「8年前からこの工場で働いていて、今は月にE1,000の収入です。このわずかな収入で5人家族を支えています。電気・水道代込みで月E450の家を借りています。労働時間が長いので、他に収入を得るための仕事ができません。しかし、不足とは言え今はまだ食卓に食べ物があるのだから、今の仕事を失うとどれほど厳しい状態になるか想像できません。政府には私たちの工場が閉鎖にならないようお願いしたいです。 仕事を失った人々が路上にあふれる状態になれば犯罪率がきっと高くなるでしょう。」

“Samu Ndzimandze”さん : 「縫製工場で8ヶ月働いています。 私は23歳で、親が失業中なので4人の兄弟(姉妹)の面倒をみています。月E350で家を借りています。 収入は2週間でE600です。この収入では不十分ですが、家具やTVセット、タンス、椅子などもそろえることができました。女性として他の女性と同じように毎月髪型をかえます。AGOAから除外されると影響をうける国民が大勢いますから、政府にはそのことをよく考えて国民にとってよい解決を考えて欲しいです」

“Sipho Mabuso”さん : 「私は2004年からここで働いていて、当時2週間につきE430でした。 たいして給与は増えませんが、今は月E1,000です。この給料で家族10人、どうにか生活しています。月E350の家賃を払って、税控除を月E50受けています。生活は厳しいけれど、今の職を失えばもっと厳しくなります。今の縫製の仕事以外に何をして生活できるでしょう?多くの国民にとって生活の糧を得る唯一の機会を失うことのないように政府にお願いしたいです。」

今の為替レートでいうと、大雑把にですが、1ドル=E10=¥100となっていますので、上記の方たちが月E1,000(およそ$100、1万円)に満たない収入で数人の家族を養う、という状況はUNのいう『一人一日2ドル以下で生活する』極貧レベルの生活であることを示しています。

AGOA適格国として存続するためには、いくつかの「民主化」に向けた憲法・法律の改定が必要と言われているのですが、そうした方向に政策が動き出す気配は感じられず、一方では、数日前の新聞にこんな記事が載っていました :

王族への給付金

一方で月E1,000(約1万円)の収入で貧しいながら多くの家族を養っている人々がいるかと思えば、他方、先王のご子息(なんと先王には73名のご子息が!)方にはお一人ずつ(現在の収入の有無に関係なく)E150,000(約150万円)が名目不明のまま供与される、というスワジランドの今の姿です。

カテゴリー: Swaziland 生活事情, Swazilandについて感じること, Swaziland全般 パーマリンク

【新聞記事から】AGOAについて(2) : 庶民の暮らしへの影響 への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です